まだ当分は脳内<松>がとれないTAKINOJOであります。
本年第一弾は義太夫の「万歳(まんざい)」でございます。今週の日曜日に広島市内で盟友のマッチャンこと野澤松也さんのライブでやることになったので、ちょいとお勉強いたしました。
作った手ツケはいつものとだいぶん風情が違いますでしょ? この曲は古くから大小鼓の手が付いておりましてですね、これが非常に難易度が高いのでありますよ。なかなか上手くいかないんですね。今回は予算の都合で囃子は私一人だもんですから、最初は大小鼓の手ツケを見ながら小鼓の一調をやろうと思ってたんですけどね、やってみるとこれが上手くいきませんでした。
何が上手くないといって、生け殺しが激しく奏者によって随分と解釈の違う(ように聴こえる)義太夫の三味線に無理やり、大小の鼓でチリカラ拍子を合わせようというコンタンがまずいけないのではないかと、かようにと思うのであります。
<チリカラ拍子>というのは「メロディの音形にそって手をつける」というのが基本なんですけど、浄瑠璃の節に合わせて自在に生け殺しをする義太夫に二人がかりで一つのリズムを作るチリカラ拍子はとても難しいのでです。これは複数のメロディが混在することの多いお筝の演奏に囃子をつける時にもいえることです。こちらはどのメロディに着いたらいいのかわからなくなっちゃうんですよ。
こういうときはメロディラインを堂々と無視できる、能楽の手組を使うとけっこう解決しちゃったりします。弦楽器とはテンポだけ共有していればよいですし、盛大に掛け声なんかしちゃっていかにも邦楽っぽい演奏になります。
この度は手許にある音源から小鼓を入れるところの三味線の手を採譜して、そこに一調の手をこさえてみようと考えたのでした。ゴロゴロしているお正月だからこそ、できることであります。
私、もう長いこと研譜を使っていますが、実は長唄の手ほどきが佐門の先生だったもんで「いろは」で表記する「佐門譜」というのを読み書きすることができます。これ、採譜する時に使いやすいのですよ。義太夫の三味線譜はこの「佐門譜」に酷似している… と思いましたら、佐門の何代か前の家元が義太夫の譜をヒントに考案されたのだそうでした。
ウチに二種類あった音源を聴きながら、この「佐門譜」で採譜して、今度は三味線を弾きながら一調の手を考えようと思ったのでありました。
三味線の手はけっこうあちこちに「三番叟」のモチーフが登場しております。そういうわけでお正月ということもあり、おめでたい<三番叟>の手を随所に配してみました。<三番地>はもちろんのこと、「万歳」だから洒落たというわけでもないのですが<千歳の地>や<乱れ長地>、最後は「鈴の段」みたいにして、すっかりテンコ盛りにしちまいました。難易度はともかく、体力勝負の一調になった感があります。さて、日曜日の本番はどうなりますことやら…
2016年1月10日(日)13時開演
広島・西十日市町 着物アトリエ「ずいこ」にて
野澤松也 創作浄瑠璃 弾き語りライブ
http://www.zuiko.jp